神戸市垂水区霞ケ丘の垂水オアシス動物病院は人間と動物の絆を大切にする診療を心がけています。

オアシス便り
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TPLOの合併症(前十字靭帯断裂)

犬が急に後ろ足を痛がりだして、ケンケンしている、ということで、

動物病院へ連れていくと「前十字靭帯断裂」と診断されることが多いと思います。

 

前十字靭帯の断裂は小型犬〜大型犬の跛行(歩様の異常)の一般的な原因の一つです。


糸を使用した関節外安定化術が国内では一般的に行なわれておりますが、

関節外安定化術では膝関節の安定性を得るために非吸収性の糸を用いて行なわれる為、

糸の「断裂」や「ゆるみ」により手術後に臨床症状が再発する症例が存在します

 

特に、関節外安定化術では体重負荷の大きい大型犬や、

脛骨高平部の角度が急な小型犬(ヨーキーなど)では、

たとえ完璧な手術を実施したとしても、

術後に糸が切れてしまい症状が再発するケースがどうしても一定数(10%程度)認められていました。

 

そこで、


1993年にアメリカのDr.Slocumらが考案した、犬の前十字靭帯断裂症に対する新しい手術法がTPLO(Tibial plateau leveling osteotomy : 脛骨高平部水平化骨切術)です。以後米国を中心として20年以上の歴史があり、当初は大型犬へ応用されていましたが、現在では小型犬や猫にも広く行われています。

 

ただ、海外では広く行われていますが、

国内ではTPLOを施術している動物病院は全国的にみても少なく、

神戸市内でもTPLOを実施している施設はほとんどありません。


複雑な手術で、特別な器具とトレーニングが必要となりますが、国内で一般的に実施されている関節外安定化術よりも多くの点で優れており、現在、最も成績の良い治療法とされています。(90%以上に症状の改善が認められる)
TPLOには術後早期の回復が得られること、術後の機能回復がより良好であること、手術後の骨関節炎の進行がより軽度であること、手術後の半月板損傷の発生率が低いなどのメリットがあります。


当院では小型犬〜大型犬のTPLO専用器具一式を揃えており、

前十字靭帯の損傷に対して、積極的にTPLOを実施しています。

 

 

TPLOの合併症とは?

ただ、術後の回復が最も良いとされているTPLOにも合併症は存在します。

 

報告によると、

TPLO手術に伴う合併症の発生率は10〜34%で、再手術が必要な合併症は<5%とされています。

 

どんな合併症が起こりえるのか見ていくことにしましょう。

 

まず、

術中の合併症から。

 

1、脛骨や腓骨の骨折

 

2、前脛骨動脈からの出血

脛骨をソーで切る時に動脈を傷つけると、大量の出血が引き起こされることがある。

術中に骨から筋肉を分離したり、ガーゼを詰めたりすればある程度回避可能。

出血した場合は、止血が必要。

 

3、ドリルやスクリュー、ピンの破損

骨に穴を開けたときに、ドリルやスクリュー、ピンが途中で折れてしまうと取り除けなくなることがある。

そのままにするしかない場合が多い。

 

4、スクリューが関節内に入る

スクリューを挿入する角度を間違えると、関節内にスクリューが入ってしまう。

術中に気を付けて手術を行い、必要があれば術中にレントゲン検査を行えば回避できる。

 

5、スクリューが骨切り線に入ってしまう

プレートの設置位置をよく検討して、スクリューを挿入する必要がある。

必要があれば術中にレントゲン検査を行う。

 

次に、

術後の合併症

 

1、感染

術後に感染が発生することがある。

感受性試験や抗生剤の投与を行い治療を行う。

 

2、漿液の貯留

術後に圧迫包帯を行って予防。

 

3、半月板損傷

内側半月板が損傷することがある(<5%)。

 

4、脛骨粗面の骨折

TPLOで骨を切っているため、

この部位(脛骨粗面)が折れることがある。

 

5、スクリューの破損

術後の安静不足。

プレートやスクリューのサイズを大きくすれば予防できる。

 

6、スクリューが緩む

ロッキングプレートやスクリューを使用すれば予防できる。

 

詳しく知りたい方は、

英文になりますが(グーグルの翻訳機能などを駆使してみてください)

 

Complications associated with tibial plateau leveling osteotomy: A retrospective of 1519 procedures

 

Complications of tibial plateau levelling osteotomy in dogs

 

をご覧ください。

 

今回は合併症について記載しましたが、

実際のところTPLOは重度の合併症も少なく良好に治癒することがほとんどです。

 

当院でのTPLO手術症例でも幸いなことに今までのところ大きな問題は発生しておらず、

術後の運動機能の回復も良好で皆とても良い感じです。

 

TPLOは術後成績が良くメリットが多い手術です。

 

ただ、

確率としては少ないものの、

術後の感染症や合併症が発生する可能性は、

上記論文のように米国外科専門医の執刀時でもゼロではないと報告されているため、

TPLOを受けられる際には、主治医の先生に事前に考えうる合併症についてもお聞きになられるのをお勧めします。

 

 

 

垂水オアシス動物病院

獣医師 井尻

 

(神戸市垂水区霞ヶ丘にある動物病院です)

 

 

| tarumioasis2 | 前十字靭帯断裂(TPLOなど) | 19:36 | comments(0) | - | ↑TOP
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